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イラストはマンガ風に、離乳食はカラー写真で

タイの最新版の母子手帳は45ページ。お父さん、お母さん、姉と弟の家族4人がマンガ風に描かれたピンク色の表紙、離乳食はカラー写真。熱帯の国だけあって、パパイアやマンゴーの写真もあります。妊娠中に気をつけることが書かれた「すごろく」風のイラストが折り込まれ、体重の増加曲線は緑色とオレンジ色に塗られています。緑色なら大丈夫、オレンジ色なら栄養失調になっているので気をつけてくださいネ、というメッセージです。
妊娠中のケアや子育てに関心を持ってもらおうと、どのページにもカラーのイラストが盛り込まれ、ユーザーがうきうきとするような楽しい母子手帳になっています。

妊娠すごろく。出産すると「あがり」になる。 タイのマンガ風な母子手帳 3ー4ヶ月、5ー6ヶ月の子どもの発達。お父さんが、ガラガラを振っている。
はじめは、地味だったタイの母子手帳

タイの母子手帳も、はじめから派手だったわけではありません。日本の母子手帳にヒントを得て、保健省によりタイ版母子健康手帳が開発されたのは1985年のこと。すでに使われていた予防接種カード、栄養カード、妊婦カードなどの、複数のカードを1冊の手帳にまとめたもの。わずか14ページで、カラー印刷もほとんどありませんでした。表紙が薄いピンク色だったので、それ以後、タイでは母子手帳のことを「ピンクブック」と呼んでいます。

開発当初は、地味だったタイの母子手帳。
母子手帳は進化する

いくつかの県で試行すると、とても評判がよかったので、1988年には全国レベルで配布されるようになりました。母子手帳に関しては保健省が責任をもち、中央政府の予算で印刷費も出しています。タイの保健省では、きちんと利用者に対する調査を重ね、利用者の意見を取り入れる形で、数年ごとに大幅な改訂を行っています。ただ、表紙のピンク色だけは変えない方針だそうです。
いまでは、全国の妊婦と子どもの保護者を対象に、年間約70万冊の母子手帳が保健所や病院において無料で配布されています。普及率は約90%。母親の満足度は高く、90%の母親は病院や保健所に母子手帳を持参しています。

少子化のなかでの行政からの感謝の気持ち

タイも少子化の波が押し寄せています。子どもを生んでくれると決心した家族に対する行政からの感謝の気持ちが盛り込まれています。同時に、母子手帳を利用してグループでの健康教育にも力を入れています。
そうした様々な努力の結果として妊産婦死亡率(出生10万対)は48(1984年)から9.8(2006年)となり、乳児死亡(出生千対)も40.7(1984年)から11.3(2006年)に減少したと、小児科医のシリクル先生※は話していました。

※シリクル先生
タイ保健省保健局 シニアアドバイザー
元マヒドン大学アセアン保健開発研究所 教授

執筆:NPO法人HANDS
代表理事 中村安秀