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フィリピンの少数民族のくらし

フィリピンには、7,000以上の島があり、1,200万人以上の少数民族の人びとが主に離島で暮らしています。公用語は英語とフィリピン語ですが、国内で使われている言葉は100以上もあるといわれています。
ダイビングなどのマリン・スポーツで有名なパラワン州コロン島には、タグバヌア少数民族の人びとが住んでいます。貧しい家庭が多く、水道もなくトイレもありません。子どもたちは、家の周辺の灌木や近くの小川で用を足し、お尻を拭くときには木の葉を使います。手を洗う時は、ほんの少しの水で手を濡らすだけ。石鹸は高価な商品なので、どの家庭にもあるとは限らないからです。

表紙は現地の言葉で書かれ、裏表紙にはタグバヌアの母子の写真。 
世界で初めて、少数民族のための母子手帳ができた

フィリピンの国費留学生として大阪大学に留学していたカルビンさん※は、少数民族の子どもや母親の健康の向上に貢献したいと考えていました。タグバヌアの母親や地域の保健センターの看護師やヘルスワーカーと相談した結果、少数民族のための特別な母子手帳をつくることになりました。
表紙はカラー印刷ですが、予算が少ないので、本文は白黒印刷だけ。しかし、内容は充実しています。検診結果の記録だけでなく、下痢の予防と治療や家族計画といった、すぐに役立つ具体的な情報を載せることにしました。実際に母子手帳が配布された後、ヘルスワーカーは母子手帳を見せながら母親にていねいに説明していました。

 

母親にとって、家族計画の知識はとても重要です。
母子手帳が知識や意識を変える

母子手帳の配布後に何が変わったのかを知るために、調査が行われました。母親たちは母子手帳をきちんと保管し、検診などの機会に母子手帳を活用していました。妊婦検診の適切な回数、母乳育児、離乳食など母親の知識に関して、大きな改善がみられました。
国際保健分野では、グローバル化の潮流のなかで、世界各地の少数民族における保健医療のあり方が大きな課題となっています。そのなかで、少数民族の当事者が深くかかわり開発された、フィリピン・タグバヌアの母子手帳が注目されています。この母子手帳を使い続けるうちに、人びとが病気の予防に関心をもち、子どもたちの衛生行動が変わり、健康な生活が送れるようになってほしいと願っています。

家庭でくつろぐ、タグバヌアの母親たちと子どもたち。

※カルビンさん:Calvin de los Reyes
フィリピン大学公衆衛生学部卒業。大阪大学で博士号取得後、現在、大学院人間科学研究科の特別研究員。
世界の母子保健の向上に意欲をもやす、30歳の青年。

執筆:NPO法人HANDS
代表理事 中村安秀 

 

 

 

表紙は現地の言葉で書かれ、裏表紙にはタグバヌアの母子の写真。