母子手帳リレートーク

「孤育て」から「Co-育て」へつながる母子手帳

一般社団法人ドゥーラ協会・代表理事 丑田 香澄

 

こんにちは、丑田香澄と申します。母親となって、もうすぐ3年。現在は、「母親も、すくすく育つ世の中に。」をスローガンとする、ドゥーラ協会という団体を運営しています。出産後の母親に寄り添い、育児期の第一歩を支える存在=“産後ドゥーラ”の養成事業などに取り組んでいます。

私にとって、出産後の時期は、決して明るいばかりとは言えないものでした。産後で身体はフラフラな上に、突如始まる24時間の子育て。さらに、出産前に退職していた私は、我が子は可愛いけれど、じゃあ私の人生は今後どうなる?と、社会から切り離されたような漠然とした不安を抱えていました。

でも、これから子どもにどんな姿を見せていきたいかを改めて考えたとき、「子どもがいるから仕方がない」と望みを諦めることはしたくなかった。新しい命が誕生するタイミングこそむしろ、親となる人もまた、自身の生き方や他者との関係性など様々なことを見つめ直し、第二の人生の幕開け!と捉えることができたら。そして、「子どもがいるからこそ、可能性が広がった!」とイキイキ人生を歩む親の姿が、子どもが育つ上での土壌になれば……。そんなきっかけを作るべく、活動を続けています。

 

(1)現場から見えてくる子どもの現状と課題

「望んだ我が子なのに、可愛いと思えない」「日中母子家庭の状態で、夫への愛は冷めた」など、出産後に苦しむ母親の声をよく耳にします。実家の手は借りられず、昔のように見守ってくれる地域住民もいない。父親の帰宅は夜遅く……。現代の母親は、孤独と隣り合わせです。イクメンは増えても、育休取得率はまだ僅か。また、結婚・出産を機に女性が退職する割合も(これは日本くらいだそうですが)半数以上というのが現状です(H22調べ)。都市化や核家族化が進み、人間関係が希薄化する中、いつしか母親は子育てを抱え込み、産後うつや児童虐待が社会問題として取り上げられるようになりました。

人は、自分が誰かに認められてようやく、他の人を認め、愛することができるといいます。実際にアメリカの研究で、「支えてくれる存在がいることで、母親は我が子を愛おしく感じ、産後うつも減る」ということが報告されています。子どもにとって極めて身近な存在である母親が、笑顔でいるか、それとも泣いたり怒ったりしているかという影響は大きい。父親や周囲が、母親ひとりに我慢を強いるのではなく、まず母親を大切にすることは、とても大事なことです。

もう一つ大切なのが、子育てはみんなで、ということ。自殺や鬱、いじめに犯罪など現代の多くの社会問題の背景の一つに、日本の子ども達の自己肯定感の低さが挙げられていますが、こうした点からも、密室で1人ないし2人だけの価値観のもとで子育てが行われることの弊害を、改めて考える必要性がありそうです。「愛されなくて寂しい」という“無干渉”や、「親の敷いたレールが絶対」という“過干渉”……。今改めて、家庭の在り方や周辺環境を見つめ直し、多様性の中で学び補い合いながら子育てをすることについて問われているように思います。

 

(2)母子手帳と課題解決の関係性と可能性

最近、フィンランドの保健師さんに、現地の子育て支援について教えていただいた際、出産前後に全8回の「両親学級」があり、97%ものカップルが参加することを知りました。親となる夫婦が、パートナーシップ(夫婦関係)、出産直後の産褥期(さんじょくき)、子育てで大事なことなどを広く学び、また、地域とつながるきっかけになっているのだとか。このように「知り」「つながる」ことは、今後の子育ての大きな鍵となると感じます。

まず、知ること。情報化社会の中で、本当に必要な知識や情報の取捨選択が難しくなっています。そんなとき、「最低限これだけは!」というコンテンツを、母子(親子)手帳に掲載できたら、と強く思います。産後に人を頼る必然性や、親の役割として大切なことなど、これから親となるすべての人に共通して知ってほしいことを、多くの方と手と取り合いながら今後も考え続けていきたいです。

 そして、つながること。母子手帳がいわば、子育てにおける「パスポート」としての役割を果たし、Web上で子育てにまつわる地域コミュニティの情報を入手することができたり、母子手帳に掲載しきれなかった役立つコンテンツを読むことができたり。それまで「地域」を意識しなかった妊婦さんも、自然とリアルで人や機関とつながるきっかけが出来るような仕組みを整えられたら素敵だなあと思っています。産後に誰も頼れないと困っている妊婦さんが、ドゥーラのことを知り、頼ってくれるきっかけにもなったらいいな(笑)。

 

(3)子育ておすすめアイテム

アイテムではありませんが、私のおすすめは“対話”。まず、親子の対話。「まだ話せないから」と思いがちですし、実際に最初は一方的に感じるかもしれませんが、赤ちゃんはちゃんと聴いている。子どもにとって、親との対話は、初めての人間関係でもあるのだ、と感じます。私自身、娘が3歳近くなった今も、毎日の対話や絵本を使ったコミュニケーションなどは、親子の大切な時間です。

そして、夫婦。出産は、夫婦関係の一つの大きな危機だとされていますが、この時期、パートナーとの関係に悩む夫婦は本当に多い。どんな家族でありたいか、それぞれが仕事や人生をどうしたいかなど、対話なくして歩み寄りは始まりません。家事の分担など方法論に目が向きがちですが、まずは思いを言葉にしないと伝わりません!

さらに、自分との対話。私は、NPO法人マドレボニータという産後ケア団体の「産後クラス」に参加したことで、自分自身の思いと向き合う重要性を知り、「こんなふうに人生を歩みたい!」との思いに気づくことができました。また、周囲や地域の人と、共に子どもを育てていく上でも、対話の力は欠かせないと常々感じています。人は一人で生きられない。「孤育て」を「Co-育て(共育)」にギアチェンジし、対話を重ねながら、社会全体で子育てできる社会になればと願うばかりです。

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