母子手帳リレートーク

グローバル社会に順応する母子手帳を

コミュニケーション・プロセス・デザイナー 井口奈保

自分が持っている力をすべて活かした仕事をしたい。そう思って「コミュニケーション・プロセス・デザイナー」という職業を作りました。生まれてから死ぬまで、呼吸と同じくらい無意識に、絶え間なく、私たち人間はコミュニケーションをして生活を営んでいます。だから、「どうやってコミュニケーションをするか」という部分に焦点を当てることで、幸せで健やかな暮らし方、働き方、愛し方ができると気付いたんです。コミュニケーションは仕事だろうがプライベートだろうが、年齢が違っても、地球の裏側に行っても、人間以外の生き物とさえ、あらゆる場面で行なうので、生きる上での本質だと考えています。どんな活動にとっても土台となる、一緒に働く仲間とのチームをデザインしたり、業種、世代、国籍を越えたコミュニティを育てたり、これからの社会を動かしていく10〜20代の若い担い手が、自分自身の手で未来を描くためのお手伝いをしています。

(1)現場から見えてくる子どもの現状と課題

私の同僚や友人には、胎児、あるいは0〜6歳になる子供のお父さん、お母さんがたくさんいます。子を産み、育てる者として気になる話題は山ほどあります。産後の体調不良とどう向き合うか。育児と家事をどう両立するか。保育所の状況はどうか。進学する小学校はどこがいいのか。でも、最も危機的に私たちが意識を傾けていることは、311後の日本の安全についてです。私たちが飲食している水、お魚、お肉、お野菜はどれだけ安心なのでしょう。福島から200キロ前後に位置する関東圏にはどれだけの影響が及んでいるのでしょう。日本海側の海産物は絶対に安全なのでしょうか。育児をする地域環境、社会制度、教育システム、子育てのための栄養学。たくさんの進化してきた点があります。まだまだ改善すべき点があります。ですが、これから子供たちが成長していく土地と、そこから採れる空気と水と食べ物が安心できるものかどうかが不透明では、どんな政策をとっても、どんな素晴らしい教育方法が広まっても、栄養バランスのとれた食事を作ってあげても意味はありません。私にはウクライナ人の友達がいます。5歳の時にチェルノブイリ事故が発生。彼は15キロ圏内で被爆しました。36歳になった彼は今、総入れ歯の治療を行なっています。20年、30年後の子供たちのことを見据える必要があります。いのちにとって最も大事なものは何なのか?そのことと真っ向から対峙し、どこで子供を産み、育てるのが地球で暮らす生き物として良いのかを考えざるを得ない時代に、私たちは冗談抜きでいると思います。

(2)母子手帳と課題解決の関係性と可能性

母子手帳は日頃から、そして末永く使えるものになると便利だと思うので、2点提案をしたいと思います。1つ目は、母子手帳が中学生、高校生、大学卒業と子供が大きくなり、成人してからも活用できるようなデザインにすることです。大学生の時にかかった病名や健康状態まで書き込めるようにして欲しいわけではなく、成長してからも記憶があまり残っていない幼少期の状況を知るツールとなるような、いつまで経っても手に取りたくなるデザインにするという意味です。こうすることで、親子のコミュニケーションのきっかけになるかもしれませんね。2つ目は、予防接種、既往症、特記すべき病気や怪我について、予め先生から英語でも記載しておいてもらうことです。家族で海外移住になった時、子供が留学したい時、あるいは、海外で出産したいと夫婦で日本を離れることを決めた時など、外国でビザを取得して生活することになった場合、その国の法律に準じた予防接種の履歴情報や検査結果の提示が求められます。何十年も前の記録を探し、英語で診断証を書いてもらうのは大変です。その時にお願いする先生自身が英語を知らず、苦労する場合もあります。母子手帳に最初から日英で書いてあれば、グローバルに活動する際に大変役立ちます。

(3)子育ておすすめアイテム

まだ子育てをしたことがないので具体的なアイテムはないのですが、コミュニケーション・プロセス・デザイナーという視点から、人間が小さい頃から必要だと思うものを上げます。それは物ではなく、人間以外の生き物の存在です。犬、猫、魚、鳥、ハムスター、ヤギ、馬。どんな動物でもかまいません。人間だけで暮らしているわけではないので、他の生き物の存在と暖かさを知り、いのちについて体で触れさせてあげてください。言葉以外のコミュニケーション能力が抜群に高いのが子供です。それを絶やさず育み、大人になってもらうことが、私たちの役目だと思います。

 

母子手帳リレートーク・一覧に戻る