母子手帳リレートーク

母子手帳に子どもの「自己肯定感」を高める役割を

会社員 青木 智宏

 

小学3年生と5歳の娘の父親です。ベネッセと言えば通信教育をイメージされる方が多いと思いますが、私の仕事は教室を全国に広めることで、主に他業種とのアライアンス(業務提携)を担当しています。また前職で仙台と福島に住んでいたこともあり、震災後は友人が東北で立ち上げた「学習能力開発財団Lead」(http://www.lead.or.jp/)の理事として、発達障がい児や震災遺児の支援をする活動をしています。
 

(1)現場から見えるこどもの現状と課題 

仕事柄、地方出張も多いのですが、そこで子どもたちを通して見えてくるのが「教育格差」の問題です。この問題はもちろん東京にもあるのですが、世帯年収が低い地域ではより一層深刻です。分かりやすい例としては「大学進学率の低さ」が挙げられます。例えば全国学力調査で上位の秋田県や青森県は、学力が高いにも関わらず大学進学率は全国でも最低レベルです。逆に学力調査では最下位に近い大阪が、大学進学率は全国平均を大きく上回り、青森県よりも20%近く高いなどと、一見不思議な現象がみられます。これは別に高卒が悪いとか、大学に進学することが善だ、という話ではありません。本人は大学を希望しているのに環境が理由で叶わなかったとしたら残念な話ですし、国としても大きな損失です。また大学に進学しないということは、地元から教員となる人材が育たないということなので、地域にとっても教育面での格差をますます広げるという負のスパイラルになってしまっています。

調べてみるとこの問題の根底には「貧困問題」があることが分かってきます。今、日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。OECDの調査によると、日本の相対的貧困率は世界で4位です。「え?日本にも貧困とか格差とかってあるの?」と正直実感が湧かないという方もいらっしゃいますが、そもそもこの問題が認知されていないこと自体が日本の抱えている一番大きな問題だと思っています。貧困は親から子へと繰り返し世代間で連鎖しています。つまりどの親の元で生まれたかによって教育機会や可能性が決まってしまうのです。そして貧困家庭に生まれた子は、その負のスパイラルから抜け出すことは相当困難です。言うまでもなく、子どもには何の罪もありません。
そうした家庭では、子どもの「自己肯定感(自尊心)」が極端に低い傾向があると言われています。自己肯定感が低くなると、子どもたちは他人に無関心になり、自分のことも大切にしなくなります。いじめや自殺、不登校の増加の原因にもなります。こうした問題は、国や学校まかせにせず、私たち一人ひとりが取り組まなければいけない社会問題です。貧困の連鎖をなくして、誰しもが生まれた家の経済状況に関係なく学べる社会の仕組みを作っていく必要があります。

(2)母子手帳と課題解決の関係性と可能性 

母子手帳には親と子どもの「自己肯定感」を高めていく役割を期待しています。自己肯定感の土台となるのは「親の愛情」です。家庭の経済状態に関わらず、我が子の幸せを願わない親はいません。子どもも「自分は親に認めてもらっている大切な存在なんだ」と思えば自分を大切にするようになり、他人も大切にすることにつながります。本当はそれを言葉で伝えられれば一番いいのですが、子どもが小中学生になるとなかなかそんな機会も減ってくるでしょう。それを可視化することが母子手帳にはもっとできるはずです。現在は母親か医師が書き込む欄がほとんどですが、これからは父親が気持ちを書き込める欄を増やしたり、子どもとも一緒にコミュニケーションをしながら記入する欄をぜひ増やしてもらいたいです。子どもの自己肯定感を高めるには、まずは子どもの話をよく聞いてあげることです。そして子どもたちにとっても、母子手帳を定期的に見ることで、どれだけ自分が望まれて生まれてきたのか、どれだけ大切に思われているのかを再認識する機会となります。

また、「ハイハイができた」「自分の名前が言えた」などと「○○できた」という成長の記録がどんどん増えていくと、自ずと自己肯定感を高めることができるのではないでしょうか。同時に、子育てをがんばっている親にも自己肯定感を高める働きかけは必要です。はじめての子どもが1歳になったお祝いは、パパやママとしても1歳を迎えたことになります。これからの母子手帳にはぜひそうしたお祝いのメッセージや、ほめほめ機能を標準装備して欲しいと思います。親が自分自身の自己肯定感を高めることは、子どもにとっても幸せなことです。そういった意味では、このプロジェクトから生まれた親子健康手帳(写真ではピンクのもの)はとても進歩的で工夫がされていると思います。
少し話は変わりますが、この記事を書くにあたって周囲のママさんたちに今の母子手帳の使い勝手についてヒアリングしてみました。一番多かった声は、「いつ、誰が、どこに、何を書いたらいいのか分からない」というものでした。使い方のレクチャーがないため、自分で読み解いていくしかないのが現状のようです。予防接種もどれがMUSTで、どれが任意なのか分かりません。役所に聞けば教えてくれるのでしょうが、働いているとなかなかそんな時間もありません。受けるべき予防接種を後から知った…(汗)とか、医師が書くべき欄に書いてしまっていて叱られた(涙)とか、好きなアイドルのことなども書いておいたら後で幼稚園や小学校に提出することを知って赤面した(笑)など、ほとんどの方にほろ苦い経験があるようでした。二番目に多かった声が、「父親が書く欄も欲しい」「母子手帳ではなく、親子手帳というネーミングにしてほしい」というものでした。共働き夫婦も増えて、父親が子育てに関わる時間も増えてきています。シングルマザーへの配慮は必要ですが、父親の気持ちを残す欄や、父親にも役立つ情報などを増やしてほしいというものでした。これはぜひ全ての自治体で早急に取り組んでいただきたいですね。三番目は「もっとスペースが欲しい」との声でした。「予防接種の欄が少なすぎる」、「お薬手帳も一緒にして欲しい」、「子どもの写真を貼るページが欲しい!」と要望の理由は様々でした。

こうした声を聞いていくと、「WEBとの融合(による多様化)」がキーワードになるのかなと思っています。何ごとにも不易と流行があるように、手書きの良さなど「紙」としての母子手帳は残しつつ、例えば手帳を「差し込み式」やシステム手帳のような「バインダー式」にしていき、必要なページはWEBからダウンロードしてカスタマイズできるようにするなんてこともできるかと思います。レクチャーやチェックリストのページ、予防接種やお薬の欄、子どもの写真や父親の記入欄など追加すると確かに便利ですし、後から見返すのも楽しい手帳になりそうです。私は最初の子が静岡県で産まれたのですが、写真にあるように、子どもの成長がすごろく形式で記録できるページがあり、楽しい上に一覧性があって重宝しました。こうしたいいページは、自治体の枠を超えて使いたい人が使えるようになっていってほしいと思います。

(3)子育ておすすめアイテム

①シアーズ博士のベビーブック


http://amzn.to/qgCQpp
現役の小児科医のシアーズ博士と看護婦である妻マーサが書いた育児書です。出産から離乳、歩きはじめやトイレトレーニングまで、豊富なデータと科学的な根拠があり、数ある育児書の中でも信頼度は抜群でした。専門家としての視点だけでなく、8人の子どもを持つ親としての悩みなども赤裸々に書かれており、親近感や共感を持って読めるおすすめの本です。

② たまひよbefa!(ビーファ)

http://www.benesse.co.jp/befa/lineup/details01/
たまひよが先輩ママ2000人に「こんなのが欲しい!」という声を聞いてリリースしたパパママ準備講座です。妊娠・出産・育児の時期は慌ただしいので情報収集の余裕もなかなかとれませんが、befa!は妊娠月数や月齢に合わせて毎月タイムリーに必要な情報冊子が実践グッズとセットになってご自宅に届くので、ゆとりと自信を持って過ごせます。なかでも「父なる覚悟ワーク・ライフ・バランス」というパートナー応援ブックは私の周囲でもとても評判がよく、パートナーの父性を養うのにも有効かと思われます(笑)

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