母子手帳リレートーク

子育てに関わる人が元気になると、子供も元気に!

NPO法人メンタルサポート・ネットワーク代表 村上 裕恵  

NPO法人メンタルサポート・ネットワークの代表をしている村上裕恵です。NPO法人メンタルサポート・ネットワークは子育てをメンタル面からすこしでもサポートしたいという願いから2008年に設立されました。現在子育て経験のある臨床心理士がお母さん、お父さんの子育て相談、ペアレンツ・コーチング、保育関係者へのカウンセリングなど、子育てに少しでもお役にたてる心の支援をめざして活動しています。

私自身も上は24歳から下は7歳までの二男二女の母親であり、子育ての悩みは尽きません。臨床心理士としてまた同じ母親として共感しながら子育て相談を行っています。子育て相談ではじっくり時間をかけて子育ての悩みや不安をお聞きしています。相談に来られるきっかけは子育ての悩みであったり、家族の問題であることが多いのですが、相談を進めていくうちに、だんだんとお母さん自身の悩みや生き方へと内容が変わっていくことがしばしばあります。子育てイコール親育てと言われるように、子供を育てていく中で親も悩み、考え、成長していくのでしょうか。

これはメンタルサポート・ネットワークのモットーでもあるのですが、子育てに関わる人が元気になるとと子供も元気になります。お父さん、お母さんが元気に生き生きすると子供も元気に育ちます。保育士さんが元気に保育に取り組むことによって園児も元気になります。保護者や保育者のメンタルストレスが少しでも軽くなること、心の健康が保たれていることは育てられている子供の健やかな成長につながると信じて、相談をおこなっています。

(1) 現場から見えるこどもの現状と課題

 子育てが大変な時代と言われていますが、子育て相談の現場でも今のお母さんたちはたくさんの不安を抱えながら子育てしているのだなと感じます。ミルクを飲まない、離乳食が進まないといった今も昔も共通する古典的な不安から、つい強く叱ってしまうのだが虐待にあたるのではないか、つま先立ちで歩くので発達障害ではないか、といった現代社会ならではの不安とともに子育てをしておられるのだと感じます。安全なのか、安心なのか、これで大丈夫なのか、という不安ばかりにとらわれてしまうこともあります。じっくりと話していただくと、これは大丈夫だとわかる場合がほとんどで、ほっとした顔をされて「専門家に聞いてもらって良かった。」と安心して帰られます。

これらの不安のきっかけのひとつとして良くあげられるのは、インターネットをはじめとするありとあらゆる育児情報の洪水です。歯ブラシをとてもいやがるお子さんをお持ちのおかあさんが、相談に来られたということがありました。インターネット検索したところ、発達障害児が歯ブラシを嫌がるという書き込みがあるのを見つけ、心配になり相談にきたということでした。

このように今の親たちは膨大な育児情報にさらされながら育児をしています。以前であれば少ない情報の中で情報の質や内容を見極める事が出来たものが、情報量の多さに飲みこまれてしまい、どの情報を信じてどの情報を捨てるかという取捨選択ができなくなってしまう状況にあります。そのため先程のお母さんのようにどこまでが大丈夫で、どこまでが大丈夫でないかという判断ができず、不安になってしまうのでしょう。

 

(2)母子手帳と課題解決の関係性と可能性

今回新しい母子手帳のリレートークに参加させていただくということで、私の子供たちそして私自身の母子手帳を出してみました。久しぶりに子供たちの母子手帳を出してみると、最初の子供の時の記憶がよみがえってきました。病院で記録をつけてもらうと家で何度も成長の様子を確かめていた事をおもいだし、母子手帳というのは まだ人として生を受けていない胎児から誕生まもない乳児までが社会につながっている記録であり、母親にとっては初めての連絡帳のようなものだなあという気がしました。

写真に載せているのは昭和30年代生まれの私自身の母子手帳です。またもう一つは平成生まれの私の子供の母子手帳です。中をのぞいてみると構成は妊婦の状態の記録、出産の記録、子供の記録とほぼ変わりません。驚きだったのは裏表紙の「母子健康手帳について」と書かれている文が言い回しこそ多少違いますが、内容は全く変わらないことです。これを見て母子手帳というものが大切な妊娠、出産の記録のツールとして日本の伝統ともいえるほど脈々と続けられてきたものであることがわかるとともに、新しい母子手帳がこの伝統的な記録の仕方を続けながら新しい価値を加えていくものであることに大きな可能性を感じます。

(3)子育ておすすめアイテム

 メンタルサポート・ネットワークでは二年ほど前よりペアレンツ・コーチングというプログラムを始めています。カウンセリングを受けるほど悩んでいるわけではないけれど、もっと親子の関係をよくしたい、よりよい子育てをしたいと考えるお父さん、お母さん向けのものです。

そしてこの講座では、「子供の話を一生懸命に聴くこと.(傾聴)」を特に大切なものと位置づけています。物理的なお勧めアイテムとはいえないかもしれませんが、この傾聴ということをここでお勧めしたいと思います。

子供の話を一生懸命聴いているでしょうか?実は親は子供の話を結構中途半端に聴いていることが多いものです。子供の話に「ふん、ふん」とうなずきながら別のことをしていたり、考えていたりする経験はありませんか?子供の話の一生懸命聴いていないにもかかわらず、自分の気になるところだけ急に聴き返したり、質問攻めにしてほじくり返したりすることもよくあります。幼児のたどたどしい言葉に対して、つい「なんなの?何が言いたいの?」と聴き返したり、さえぎってしまうこともあるのではないでしょうか。カウンセリングにも共通して言える事なのですが、親が自分の話を一生懸命聴いてくれること、十分にわかってもらえることは成長への第一歩となります。

この一生懸命子供の話を聴いてあげることは、児童期、思春期の子育ての中でとても重要になります。このリレートークを読まれている方はまだまだ小さいお子さんをお持ちの方が多いかと思いますが、これから長く続く子育てへのお勧めとしてぜひ心に留めておいてください。

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