母子手帳リレートーク

感謝して食べる事を伝える母子手帳を

浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職 青江 覚峰  

私はお坊さんとして、仏教的な目線からの食育の食育の活動をてがけています。その根底にある考えは「食べ物と向き合うこと」です。

わたしが「食べる」ということに注意を払うようになったのは、まだお坊さんになる前、当時生活をしていたアメリカでの出来事が発端でした。来客が「どうしても食べたい」と言う牛タンを求めに中華マーケットを訪れた際、薄くスライスされた「牛タン」という製品ではなく、付け根から切り落とされた牛の舌そのものを目にしました。今でもその光景は目に焼き付いています。ザラザラとした表面には無数の固い味蕾、手に取るとズシリと重く生々しく感じました。
 そこで初めて、自分が普段なにげなく口にしている食べ物が、動物も植物ももとは自分と同じ命であるという事実を思い知ったわけです。

(1) 現場から見えるこどもの現状と課題

現在子供向けに食事の企画を行う中で、今の子供達は食に対しての感受性が低くなっているのではないかと感じることがあります。子供を対象とした食育のイベントでも、「いただきます」や「ごちそうさま」を言わない子供が少なくありません。周りに人が揃うのを待たずどんどん食べ始めてしまう子も、お皿にまだ残っているのに勝手におしまいにして席を立ってしまう子もいます。概して、感謝して食べるという気持ちがすっぽり抜けているように見受けられます。

わたしが子供の頃は、「飽食の時代」ということが盛んに言われていました。食に関するモラルの低下が叫ばれ始めたのも、この頃だったと記憶しています。けれど、今では飽食であることが当たり前になり、「飽食の時代」と耳にすることすら無くなって来ました。それにつられるように、食にまつわるモラルの低下などということも言われなくなりました。今の子供達に「お米はお百姓さんが一生懸命つくってくれたものだよ」と言っても、心に響かないのでしょう。肉や魚も、それが自分たちと同じように生きて動いていたものだということを現実のものものとして想像することができません。子供達が目にする食べ物は、すぐに食べられるように加工されている場合はほとんどですし、お百姓さんという存在も遠いものになっているのでしょう。それ自体はもはや仕方のないことかもしれませんが、だからこそ子供達には、食べ物が命であり、多くの人々に支えられて、こうして食卓にのぼってきたのだということを努めて語り続けたいと思うのです。

(2)母子手帳と課題解決の関係性と可能性

妊娠、出産に際し、死生観や人生観が改まるという人は少なくありません。また、生まれてきた我が子の健やかな成長を願わない人もいないはずです。そのような重大な局面に、バイブル的に手元に置くことのできる母子手帳にこそ、わたしは食べ物への感謝を思い起こしてもらえるような記載があってもよいのではないかと思います。

何世代か前までは、農業や漁業、畜産業といったものが人々の暮らしの身近にあり、食べ物の流通経路もシンプルで、加工も単純でした。そして子供達は、食べ物が命そのものであったことを肌で感じ、また食べ物への感謝というものを大人達から自然に教わっていました。食生活、あるいは食文化において不足しているものは、栄養素などの「知識」であり、子供が大人になり親になったとき、その不足を補うものとして母子手帳に記載されている食品群のグラフなどが一定の効果を上げていたと思われます。

 しかし現代、誰もが義務教育の中でそれらの基本的な知識は得ていますし、健康ブームのおかげもあり、食べ物の知識のレベルは以前に比べて格段に上がっています。逆に、食べ物への感謝ですとか、他者の命を頂いて生きるしかできないことの重みを噛み締める機会は著しく損なわれています。
 全ての母子の健康を祈念して始まった母子手帳は、これまで確実に結果を残してきました。今不足しているのは表面的な知識や技術ではなく、本来ならそのもっと奥深くにあるべき哲学です。そこを補完し支えるものとしての役割を、これからの母子手帳に大いに期待します。

(3)子育ておすすめアイテム

我が家には、6歳、3歳、1歳の子供がいます。三人とも離乳食を始めるときはとても張り切りましたが、現代の子育て家庭は常に時間に追われています。保育園のバスの時刻や自分の出勤の時刻とにらめっこしながら、それでもできるだけ市販のものではなく手作りの離乳食を食べさせてあげたいと思っていました。そこで活躍してくれたのが、イワタニの「ミルサー」という商品です。

固いものをなんでも砕いてくれるミルサーを使って真っ先に作ったものは、煮干しや鰹節を砕いた即席のふりかけと、お米を砕いた自家製の米粉でした。特に米粉は、念入りに細かく砕くと、それを水に入れて5分ほど煮るだけで即席のおかゆになります。前の晩に昆布としいたけと水をピッチャーに入れておけば朝には出汁もできていますから、この出汁でおかゆを作って即席のふりかけをかければ、栄養もバッチリ、手作りの離乳食が忙しい朝でも苦労なく作れます。

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