母子手帳リレートーク

「教育と子育ての島」、隠岐諸島海士町での子育て

島根半島の北方約60kmの隠岐諸島に位置する海士町は人口約2400人の島。Iターン・Uターンが盛んな町です。島根県または鳥取県の港からフェリーで約3時間の場所に位置する海士町には産婦人科がありません。そんな海士町で暮らしている方たちの子育ての実態について聞きました。

島根半島の北方約60kmの隠岐諸島に位置する海士町は人口約2400人の島。Iターン・Uターンが盛んな町です。島根県または鳥取県の港からフェリーで約3時間の場所に位置する海士町には産婦人科がありません。そんな海士町で暮らしている方たちの子育ての実態について聞きました。隠岐諸島は西ノ島、中ノ島、知夫里島の3島(2町1村)からなる島前と、隠岐の島町(1町)のある島後に分かれます。今回取材をした海士町は、中ノ島。産婦人科がないため、妊娠が判明すると多くのお母さんは西ノ島または本土の出産予定医院で定期検診を受け、本土で出産をします。というのも、西ノ島は元々検診にのみ対応しており、島後には隠岐諸島唯一の総合病院がありますが、この隠岐病院も現在は初産に対応していません。結果として出産は本土で、となるのです。しかし、海士町では昔からこれが当たり前。それを象徴するかのように、海士町では次に生まれるのはどこの子か、自然とみんなが知っています。 

と、言っても松江まではフェリーで3時間。冬は海もひどく荒れます。万が一に備え、妊婦は出産予定日3週間前程度から本土に渡り、病院やウィークリーマンション、ホテルなどで出産を待ちます。待機入院できる医療機関が少なくなり妊婦さんへの経済的・精神的な負担が大きくなっています。海士町ではできるだけ負担を減らすために子育てを応援するためのユニークな施策を行っています。妊娠中の定期健診でかかる一回あたりの交通費と宿泊費の助成、里帰り出産のための交通費助成、出産祝金も、1人目:100,000円 、2人目:200,000円 、3人目:500,000円 、4人目以上:1,000,000円と手厚くなっています。また、妊婦は本土と海士町を結ぶフェリーは、フェリー会社のはからいで一つ上の等級に無料で変更できます。 


海士町の年間の出生数は10人〜20人と決して多くはありません。しかし、町全体が子育て支援に積極的で、2008年には、日本経済新聞社主催の「にっけい子育て支援大賞」も受賞しています。 

そんな海士町に住むお母さん8名に母子手帳について語っていただきました。

Sさん:2000年と2005年に出産。島後出身。息子のレスリング、バスケの練習に大忙し。
    母子手帳とは、成長記録。

Kさん:2004年、2006年、2010年に出産。西ノ島出身の管理栄養士。
    3人のお子さんそれぞれに育児日記をつけています。3年日記を卒業して、今は10年日記に移行中。
    母子手帳とは、なくしてはいけないもの。

Tさん:1998年、2001年、2010年に出産。海士町出身。
    大阪で2人出産し、2007年に海士町に戻ってきました。
    母子手帳とは、宝物。大事なものとしていつでも持ち出せるようにまとめています。

Wさん:2007年、2009年に出産。島後出身の看護師。病院でもらった育児日記を終了後も、ふつうのノートに
    授乳記録などマメにメモしてます。
    母子手帳とは、記録。

Iさん:2008年、2009年に出産。香川県出身の保健師。大学卒業後、就職して海士町の役場に来てからずっと
    海士町です。
    母子手帳とは、覚書。

Mさん:2008年、2010年に出産。海士町出身。保育園で保育士と調理師をしていました。
    今は子育てのために専業主婦をしています。
    母子手帳とは、記録。

KMさん:1998年、2005年、2008年に出産。島後出身。保育園で調理師をしていました。
     お子さん3人共、妊娠中は母子手帳を手放したことがありません。
     母子手帳とは、ずっと離さない大切なもの。

MKさん:2001年、2005年、2008年に出産。静岡出身の元ダイビングインストラクター。
     母子手帳とは、記録を残すもの。

母子手帳と海士町での子育てについての5つの質問

生まれた時から海士町に住んでいるお母さんも、近隣の島から海士町に引っ越して来たお母さんも、全く違う地域で育って海士町に移り住んだお母さんも、それぞれ母子手帳を交付された自治体は違えど、みなさん口を揃えて母子手帳を初めてもらった時は嬉しく、母親になる実感が沸いたそうです。定期健診や病院での受診の日程が決まっている海士町では、母子手帳を毎日持ち歩くお母さんはあまりいませんでしたが、お母さんたちは今の母子手帳についてどう感じているのでしょうか。

(1)実際に母子手帳をもらって何か気付いたことはありますか?

Kさん:母子手帳ってみんな同じだと思ってたけど、診療所に行くとみんな違うのを持ってきてて、
    違うんだーって思いました。
    嬉しくて、一人目は後ろの方まで結構ちゃんと見ました 。
    2,3人目になると読まなかったですけど、やはり嬉しかったです。
    月齢によって分かれているのがわかりやすいですよね。

Wさん:産んでからもそうですが、妊娠中も、病院から妊娠週数と月数がわかるものをもらって、
    それがとても役にたちました。
    仕事をしていたり、上の子の世話をしているとどうしても忘れてしまうので、
    こういうものが母子手帳にあるといいですね。

Iさん:妊娠中の情報って少ないですよね。検診のことくらいしか載っていないんです。
    母子手帳は、記録するもの、覚書だと思のでもうちょっと子供の成長を記録できるページがあると
    いいですね。ちょっと書き留めておけるようなところがあればいいです。
    今はだだっぴろいスペースに勝手に書け、みたいになってますよね。
    そして、大きくなるにつれてそのスペースがだんだん小さくなるんです。
    大きくなればなるほど書きたいことは増えるのに。。。自由記述の欄がほしいです。

Wさん:1歳までは成長がめまぐるしいんですよね。細々と記録しづらいけど、3歳以降になると書きたい。
    離乳食の記録などもあるといいですね。何を食べたとか、卵与えたとか。
    そうすれば二人目のときの参考にもなります。今はアレルギーなども多いですし。。。

Sさん:小学生になると母子手帳を授業で使うこともあるんですが、母子手帳は成長記録として子供のために
    必ず残したいですね。他にも病院からもらう授乳記録をする冊子や、海士町では誕生証書が
    もらえたり、これらが全て1冊にまとまったらいいなと思います。

Tさん:私が産んだ病院では、退院時に子育て日記の様なものをもらいました。
    メモ欄も多く、書き込むのが楽しい仕掛けになっているので、よく記録しています。
    お父さんが一言書く欄や何月何日に何ができたなど記録に残しておきたいことが大体書けるんです。
    子どもも嬉しいと思います。ただ、3人目の子は違う病院で産んだためもらえなかったので、
    母子手帳に書けることあれば書こうかなと思っているんですよね。行事ごとの日記を書ければと、、、
    見られて悪いことではないので母子手帳に一冊にまとまっていても大丈夫です。

Wさん:記録に残すのって大事ですよね。自分が見るためじゃなく子供たちが大きくなったときに見てほしい。
    あぁ、こうやってお母さんて見てくれていたんだ、って。
    私も母から最初の1回だけ書いた日記をもらって、1ページしか書いてなかったんですけど、
    それでも親の気持ちが嬉しかったです。今の母子手帳は数字だけの記録なので、
    今のは見ても嬉しくないかな?と思います。なので、記録するところがたくさん欲しいですね。
    大きいものだとすごい書かないと、と思ってしまいますけど、母子手帳くらいのサイズだと
    ちょっと書こうかなって思えると思います。

(2)出産から子育てについて教えてください。

Wさん:生まれてすぐ落ち込むことが多かったんです。

一同:私も、私も。

Wさん:出ておいで、出ておいでって周りは言ってくれるんですけど、化粧して出て行くのもいやだった。
    涙が出るんですよね。楽しいはずなのに。
    そんなときに、ほっとする詩などが母子手帳に書いてあるといいと思いました。
    自分がこれでいいんだって思う様なものがあるといい。

Iさん:そういうのって周りからするとなんでこんなこと?って思われるようなことだったりするんですよね。
    お母さんの時代のときとは違うし、子供自身も変わってきてるし。
    お父さんとかおばあちゃん世代も教育してほしい。おばあちゃんは自分も育児してきたはずなのに、
    子供にいろいろ与えるし。

Mさん:あと、田舎だと知らない方にもいろいろもらうんですよね。
    突然下痢したから、何で?と思ったらジュース飲ませてたりとか。よくあります。

Iさん:上の人に言うとなんでそんなことって思うけど、全部親の責任になるんですよね。
    ベテランのお母さんの話は大事なこともあるけど、今のお母さんの気持ちもわかってほしい。
    お母さんって、誰かに認めてほしいんですよね。ちょっとした言葉でもいいんです。
    頑張ってることを認めてほしい。

Wさん:相田みつをさんの詩を見てて、私このままじゃいけない。だけど、これでいいんだって思えました。
    すごくほっとした。育児書よりも役にたちました。

Mさん:あと、今共働きが当たり前ですよね。逆に家で子育てしてると楽でいいね、って言われるんです。
    私自身保育士の経験もありますけど、ほんとに子供を育てるってすごい大変なんです。
    これなら働いてる方が楽だって思うことが子育てをしたこの3年間で何回もありました。
    ほんと、最近いろいろ事件もありますけど、自分も紙一重なんですよね。子供も痛ましかったけど、
    お母さんはどういう気持ちだったんだろうってお母さんの気持ちの方を考えてしまいます。
    そう思うと、専門家と今の子育てってこんなんだよ、って話をしたり聞けたりする機会があると
    いいのかもしれないですね。

(3)他にも母子手帳に足りないところはありますか?

Wさん:私の産んだ病院は、いろいろと指導が多かったんです。
    バースプランもたてたんですが、これも母子手帳の中にあるといいかもしれないですね。

 

Mさん:あとは、バースレビューもありますよね。立ち会った人や助産師さんなどに一言書いてもらうんです。
    私もA4くらいの紙に書いてもらったんですが、すごいよかった。
    アルバムにはさんで大事にとってあります。振り返れるのがいいんです。

Iさん:そうそう、出産の話って、したいんだけど、なかなかできないんですよね。

Wさん:生まれたときのことを、陣痛のことから書けるページもあるといいですね。
    私は産んでから夜寝れなくて、生まれるまでの記録を病院でずっと書きました。
    なんか鮮明に覚えていておもしろかったです。

Mさん:母子手帳って本当に書く欄が少ないんですよね。もっと書く欄があれば書く人も多いと思います。

 

Iさん:私は兄弟が多いから、昔から自分のことを聞いても、お母さんにもう忘れた、と言われていました。
    だから、そういう記録があるといいですね。
    だからこそ、私は記録しておかないと、って思ってたんですけど、実際何も書いてないです。。。

Sさん:兄弟がいると、兄弟でいつ何があったかわからなくなるんですよね。
    わからなくならないように、病歴などを書く欄が欲しいですね。
    メモ欄があれば、病院へ行った日や出た薬の名前など書くかもしれない。
    あと、記念日を書くところもあるといいですね。

(4)では、母子手帳があってよかったと思うことはありますか?

MKさん:子供が母子手帳を見てる時にはあってよかったと思います。

Sさん:うちもいつもかばんに入っていたので、子供が噛んだりお絵書きしたりして遊んでいましたね。

Wさん:私は2人目、3人目ができた時に上の子と比べられるのがいいです。

Kさん:私は自分のを母からもらいましたが、夫のも、義母からもらったんです。
    出していろいろ見比べるのが好きでしたね。

 

(5)母子手帳にはどういう情報があると便利ですか?

Iさん:今の母子手帳は熱を出したときの判断がよくわからないですね。
    熱を出した時に時間外だけど診療所に行くべきなのか、そこまでしない方がいいのか。。。
    やっぱり気をつかいますね。仕事外にわざわざ先生を呼ぶのも、、、。
    でも、心配なんですよね。

KMさん:見てすぐわかるような、病気の時の対応がわかるものがあるといいですよね。

Wさん:あと、誤飲したときにどうしたらいいかが書いてないんですよね。子供って結構誤飲が多いんです。
    チャートみたいなものがあって、簡単な家でできる対応などが書いてあるといいですね。
    誤飲以外にも、出血したとか、頭打った、手をはさんだ、熱出したなど、
    どうなったらすぐ病院にいかないといけないか、様子見で大丈夫なのかがわからないですね。

Iさん:私は急になにかが起こったときは、とりあえず母子手帳を頼ります。何か載っていないかなーと。
    ネットにも情報はありますけど、情報がありすぎて何が本当かわからないんですよね。
    母子手帳に書かれていると、あ、信じられるもの、って思います。
    それぞれの専門の方がつくられたものだから信頼感がありますね。

☆ ☆ ☆

自分の子供が熱を出したり、怪我をしたり、お母さんはみな心配になると思いますが、特に海士町の様な大きい総合病院のない町では、事故をどう予防したり、対処したりするかが重要となります。母子手帳は海士町のお母さんたちにとって、信頼できる教科書の様な役目を担っていました。

母子手帳リレートーク・一覧に戻る