あなたの街の母子手帳・一覧に戻る

漫画、アニメ、演劇・・・若者が集まるまち、中野区

◯まちのデータ
東京都中野区
面積:15.59km²
人口:299,673人(男性150,671 女性149,002 外国人11,545除く)2012年4月現在
出生数:2,230人(2011年) 出生率:不明
15歳未満の年少者比率: 8.5%(25,595人)
65歳以上の高齢者比率: 20.5%(61,392人)

漫画、アニメ、演劇、お笑いとサブカルチャーの担い手が集まる中野区。まちを歩いていると頻繁に芸人を見かけるほど。「まんだらけ」で有名な中野ブロードウェイや駅前のアーケード街は、平日でも多くの人で賑わっています。1 km²あたりの人口が2万人と、東京都の中でも人口密度が高い地域です。子どもは少ないけれど、20代〜40代の活動的な人たちがたくさん住んでいます。

中野区で保健師として精力的に仕事に取り組んでいる、澤田理恵さんにお話を伺いました。

中野区の保健師 澤田さん

妊婦の事情は様々。複雑な事情を抱えた方も

母子手帳は5ヶ所で交付していますが、区役所は中野駅から徒歩3分という便利な場所にあるため、7割の方が区役所で受け取ります。その数、1日10件ほど。母子手帳を渡すときには、短くても20分、質問や相談があれば一人につき30分以上かけて丁寧に説明するそうです。

母子手帳の交付は、子育て支援分野の全職員が輪番で担当します。母子保健の専門家だけではないので、説明のためのマニュアルを作り、妊婦健診やサービスに関する研修も行っています。交付のとき、どんなことに気をつけているのでしょうか?

母子健康手帳は妊婦さんご自身が所持し、妊娠・出産を、そして乳児~幼児の健康を記録していくものです。様々な状況の方がいらっしゃいますが、生涯にわたる健康づくりの大切な記録として活用いただき、お子さんに将来渡していただけたらと思っています。

母子手帳は輪番で交付していますが、場合によってはケースワーカーや保健師が最初から対応することもあります。例えば、母子手帳を22週(妊娠6か月)という遅い時期に取りにきた場合、10代の場合、父親の欄が空白の場合や書きたくない場合など、ハイリスクであることが予測できるときは、最初からケースワーカーが対応します。

年齢が高い方や仕事で悩んでいる方の場合は、保健師にバトンタッチして対応することもあります。周りで育児休暇を取った人がいないので、制度があっても活用できないという人もいますね。

制度は法律で決まっているので、本来なら会社風土に関係なく利用できるもの。働き続けたいお母さんのためにも、母子手帳にしっかりとお母さん向けの制度について書かれたものにしていきたいですね。

未受診の妊婦さんを減らすために

数年前から「未受診妊婦」が問題になっています。未受診妊婦とは、「通常の妊婦健診を受けずに分娩または入院に至った」「全妊娠経過を通じての妊婦健診受診回数が3回以下」「最終受診日から3か月以上の受診がない」のいずれかに当てはまる妊婦のことです。

東京都では、119番通報で運ばれた妊婦のうち約4割が未受診妊婦です(※)。未受診妊婦から生まれた新生児の4割がNICU(新生児集中治療室)やGCU(回復期治療室)に入院しています。

東京都23区には20ヶ所ほど、NICU(新生児集中治療室)を備えた総合病院があるんですけど、恒常的に病床数が少ないんですよね。未受診妊婦から生まれた赤ちゃんはNICUに入る可能性が高いので、飛び込み出産が多いと事前にNICUを予約している人がはじかれることもあります。

お母さんが受診していれば、NICUに入る必要のなかった赤ちゃんも多いことでしょう。適切にNICUが利用されるためにも、未受診妊婦を減らす必要があるんですね。

未受診妊婦の半数近くが25歳未満で、7割が未婚。未婚のうちパートナーと連絡が取れない人は5割近くにものぼります。母子手帳は、病院で妊娠が確定されないと交付されません。つまり、未受診妊婦は母子手帳を取りに来ないため、行政が接触することが難しいのです。さまざまな問題を抱える未受診妊婦にこそ、相談窓口に来てほしい。そのために、中野区ではある対策をしています。

元々は新宿区で始めたことですけど、去年から中野区でも「妊娠がわかって色々悩んでいる方へ」というリーフレットを作って、薬局の妊娠検査薬コーナーに置かせてもらっているんです。少しでも早く行政に繋がるようにと。妊娠検査薬までは辿り着いても、その後放置してしまう方はいらっしゃるかもしれません。でも、検査薬までは辿り着くのではないかという発想ですね。

妊娠がわかって色々悩んでるあなたへ

現在、妊娠検査薬に相談窓口情報を入れてもらうよう、国や都に要請しているそうです。保健師さんは、多くのお母さんたちが健やかに出産できるよう心を砕いているのです。

さまざまな取り組み

中野区では、上記のほかにもさまざまな取り組みを行っています。その一部をご紹介します。

■食育マスコットキャラクター「うさごはん」

中野区では食育にも力を入れています。食育マスコットキャラクター「うさごはん」が学校やイベントなどで大活躍。カレンダーやポスターにも登場し、子どもたちに親しまれています。

うさごはん

■病気でなくても、小児科に相談できる相談券

妊娠中から生後3か月未満まで、小児科に相談できる券を配布しています。病気でなくても、お医者さんに相談できるというのは心強いですね。任意の予防接種が生後2か月から始まり、予防接種で混乱するお母さんは少なくありません。予防接種の受け方や赤ちゃんの病気の見分け方などを相談する方が多いそうです。

■赤ちゃん学級でグループづくり

赤ちゃん学級は、おかあさん向けで平日と土曜日に、両親学級は休日に開催しています。両親学級は人気が高くて断ることもあるほど。赤ちゃん学級は病院でも開催されているので、中野区では2日間かけて地域でグループを作ることに力を入れているそうです。活動する場所も伝えて、グループで活動できるような下地を作っています。

■医療から教育まで、ワンストップで提供する「子ども教育部」

母子保健に関する部署は保健所にあることが多いのですが、中野区は区役所にあります。子どもに関する分野は「子ども教育部」に集約されています。親にとっては、医療から教育までワンストップで相談できるのは、とても安心ですね。

母子手帳について思うこと

2012年4月に母子手帳が大幅に改定されました。新しい母子手帳はいかがでしょうか?

かなり良くなったと思いますね。細かいことですが、表紙に生年月日が入ったので、健康診断や予防接種の窓口などで、表紙を見ただけで何歳か判断できるのがいいですね。ほかにも、妊娠中の経過を見開きで見られるようになりました。お母さん側の視点が盛り込まれただけでなく、現場のオペレーションのしやすさも改善されていますね。

澤田さんはお二人の娘さんを持つお母さんでもあります。ご自身の母子手帳と、娘さんの母子手帳を見せていただきました。

娘さんの母子手帳

自分の母子手帳をお母さんから見せてもらうといいと思います。母子手帳には長い歴史があります。母子手帳を見ることで、女性は命をつなぐ役割を担っていると考えてもらえるといいですね。

妊娠出産は、仕事と同じで人生を決める大事なポイント。産むか産まないか、妊娠するかしないかは女性に決定権がある。そうおっしゃる澤田さんの言葉の裏には、女性に対する深い愛情が感じられました。誰にも相談できない・・・と悩んだときは、ぜひ保健師やケースワーカーに相談してほしいと思います。

※「周産期母子医療センター等における妊婦健康診査未受診妊婦の状況について」東京都福祉保健局医療政策部 2010年12月より